あとかたもなく
北海道ツアーにて、手記を託された藍花がこれをまとめるために訪れた、旭川春光台の寄生木の多い丘の疎林の中に「寄生木ゆかりの地」の碑が冷たく鹿草にうもれています。
ロシア文学の米川正夫が、七師団の露語の先生として、氷柱が雪面にまで突きささる、師団官舎にいたことも、井上靖が同じ軍医官舎で弧々の声をあげたのも、今は何のあとかたもなく、反逆の詩人小熊秀雄の
ここに理想の煉瓦を積み
ここに自由のせきを切り
ここに生命の畔をつくる
つかれて寝汗掻くまでに
夢の中でも耕やさん
の詩碑が、ポプラの茂みに鋸っています。